Nov 2, 2015

パラダイス


もう11月だなんて、、、、早い、、、
YOLOってかんじ〜

先月、オーストリア出身の監督、ウルリヒ・ザイドルの3部作『パラダイス』の
ひとつだった『パラダイス・希望』を観てから、フィクションということを
忘れてしまいそうなほどリアルで生々しい描写や絶妙なキャスティングにはまってしまい
『パラダイス・愛』、そして『import/export』を借りて一気に観てしまいました
どれも優れた作品で、久々にゾクゾクしてしまいました
音楽に頼らずその土地特有の空気感と感情で観る者を染め上げ、
実生活にあるかないかの微妙なラインで発生するの小さな出来事や表情、
会話、笑い声が恐ろしき痛みとなり私の心はジリジリと締め上げられてしまいました

wikiのウルリヒ監督ページを調べたら、
"俳優を使っていても限りなくドキュメンタリーに近いテイストで撮影する。
脚本を最後まで完成させず、準備段階や撮影中に起こる出来事も映画に取り入れる。
 広角レンズの固定カメラによる長回しやBGMを挟まない淡々とした描写が特徴。"
流石ウィキ様、上手く説明してあるゥ〜

今のところ3作しか観ていないのですが、ウルリヒ監督は本当に風土を緻密に
描写していると思われます
そしてその風土描写という土台の上に、相違やら差別やらから発生する気が狂いそうな
ユーモアや憎しみや苦しみといった感情の部分がうまく載せられている感じでしょうか

『パラダイス・愛』では人種差別に性差別の深い所、『import/export』では生活水準が
高めなオーストリアの国境をちょいと超えれば、共産主義が崩れ去った後も未だ虚脱感が
空気の質量を重くするかのように漂っている国がある訳で、それを同情心というよりは
見下してしまっているようなマジョリティの表現をありのまま作品に
ぶっ込んじゃっているようでハラハラさせられてしまいます

あくまでも映画にちりばめられた痛ましい部分はウルリヒ監督の主観ではなく、
俯瞰で見た所に広がっている現実であって、だからこそウルリヒ監督は
その現実が崩れないよう、真実と汲み取れるような半分ドキュメンタリーのような方式で
映画を撮ってるんだろうなと私は思いました

すごく抽象的なことばかり書いて物語の説明しなくてごめんなさい

ところで去年、少年の実際の12年間に渡る成長をフィクションに織り込んだ某人気映画、
あと、性的虐待されたというトラウマを持ったまま児童保護施設で働く女性が主人公の
フィクション映画を見たのですが、やはりどこかしら人間の本当に不細工な所からは
ひょい〜と目をそらしてしまっていて、結局は綺麗事だけでもう一歩踏み込めない感じが
 薄っぺらく感じてしまいあまり響かなかったのですが、
ウルリヒ監督の作品には実生活には存在してるけど美しい造形物には不向きで使われない
ような醜い部分を思う存分盛り込まれており、ヒリヒリと痛むし泥臭いけど生を取り巻く
ものの本質が凝縮された作品になっていると思われます

ちなみに、『パラダイス・希望』は、ディストーションしか感じられない愛の形でしたが
青春と初恋の痛みに胸がギュンギュン締め付けられました

そんなこんなで長くなりましたがまた次回